サンゴを食べるオニヒトデの生態

サンゴを食べるオニヒトデの生態:天敵はいるの?

オニヒトデは棘皮(きょくひ)動物門ヒトデ綱オニヒトデ科に属する動物です。サンゴを捕食し白化させる動物としてメディアで取り上げられるようになり有名になりました。

 

ほぼ例外なくサンゴを食害する悪者として紹介されてしまいますが、本来のオニヒトデは、ミドリイシ類やコモンサンゴなど成長の早いサンゴを好むため、サンゴ全てを壊滅に追いやるような存在ではありませんでした。

 

大量発生で成長の遅いサンゴまで捕食し始めると、生態系に多大なダメージを及ぼすため、やむなく駆除されていますが、通常の生息数ならばオニヒトデはむしろサンゴ礁の生物多様性を保つのに貢献していた存在といえるのです。

 

そもそもオニヒトデ大量発生の原因は人間活動にあるという説が強いのですから、オニヒトデだけを悪魔化するのは無責任な話です。ここではそんなオニヒトデを害獣としてではなく、共に地球に生きる仲間として敬意を表し、その生態にフォーカスしていきたいと思います。

 

オニヒトデの生息地

インド洋・太平洋に広く分布しています。日本では沖縄県、鹿児島県などに主に生息しています。

 

オニヒトデの見た目

黄褐色、赤褐色、青灰色、など体色は個体により様々です。大きさは約15〜30cmで、ヒトデとしてはかなり大型です。また多くの人がイメージするヒトデのように、5本の腕からなる星形をなしておらず、13〜16本多数の腕を持ち、全身2cm以上の赤橙(せきとう)色のトゲで覆われています。表皮には毒腺があり、外敵から身を守ります。

 

オニヒトデの食べ物

サンゴ礁に生息しており、サンゴの軟らかいポリプが好物です。捕食する時は、口から胃を裏返して広げポリプに押し付け、そのまま消化吸収を行ないます。

 

ビピンナリア幼生は植物プランクトンを摂取し成長し、定着した幼体は石灰藻やデトリタスを食べ、さらに成長しある程度の大きさになると石灰藻、デトリタスに加え、サンゴを捕食するようになります。

 

オニヒトデの能力

オニヒトデはヒトデのわりに移動能力が高いです。サンゴを求めて1日で70mも移動することができます。

 

オニヒトデの繁殖

オニヒトデは多数の腕の中に生殖巣を供え、1個体のメスヒトデは1000万個近くの卵(約 0.2mm)を産みます。ほとんどは他の動物に食べられてしまいますが、一部が半日後に孵化し、植物プランクトンなどを食しながら成長、約半年で14〜18本の腕を持つ8mm程度のヒトデになります。その後さらに大きくなりトゲが生え始めるとともに、サンゴを食べるようになります。そして3年目で繁殖可能になります。寿命は6〜8年とされています。

 

オニヒトデの天敵

オニヒトデはサンゴの天敵として知られますが、実はオニヒトデの天敵もサンゴであることはあまり知られていません。

 

さすがに成体のオニヒトデをサンゴが狙うことはないですが、オニヒトデが生まれて間もない浮遊幼生の時期は、サンゴの主な捕食対象です。

 

また成体オニヒトデの天敵としてはホラ貝が挙げられます。オニヒトデ以上の移動能力を持ち、逃げるオニヒトデを簡単に追いつき、軟体部全体でオニヒトデを包み込むようにして捕えます。オニヒトデの大量のトゲもものともしません。

 

 

オニヒトデの有効利用

愛媛大学南予水産研究センターの研究によれば、オニヒトデの分泌液には魚の成長を促進する成分が含まれているそうです。

 

なのでこの分泌液を利用した飼料開発により、養殖魚の白点病の予防や養殖漁業の効率化などに役立つのではと期待されています。

 

実際オニヒトデが大量に駆除されている沖縄県では、畑の肥料として再利用しています。

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